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2013年4月28日日曜日

証券ディーラー「プロの視点」(4/28)

日銀が展望リポートを作成。
今後2年程度で2%の物価上昇率
日銀は26日の金融政策決定会合で、日本経済の2015年度までの見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめた。
物価情勢について「消費者物価指数の前年比は見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高い」との見通しを掲げた。
そうした見通しを示す理由として「マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映する」としている。

2013年度、2014年度の消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率(消費増税の影響を除く)と実質国内総生産(GDP)成長率の見通しも、1月時点より引き上げた。
今年度の物価上昇率を0.7%、2014年度は1.4%としたうえで、2015年度は1.9%とした。

これは生鮮食品を除く消費者物価指数を尺度として使用し、来年4月の消費税増税の要素を除いて算出した結果である。
今年1月の時点では、日銀は今年度が0.4%、来年度が0.9%と試算しており、いずれも上方修正した。
黒田総裁が打ち出した大規模な金融緩和の効果を織り込み、今後2年程度で、物価上昇率目標2%を達成する道筋を明示した形だ。
2015年度の物価上昇率2%に委員も懐疑的。
黒田シナリオに黄色信号点灯!
ただし、2015年度の消費者物価指数について、政策委員全員の見通しは、0.8%〜2.3%と幅があり、委員の中には物価上昇率目標2%に依然、懐疑的な見方があることがうかがえる。
黒田総裁が会見で明らかにしたように、佐藤健裕・木内登英両審議委員は2015年度に2%程度に達する可能性が高いとするCPI見通しに反対している。

このことからも、2015年度までに目標達成は相当難しいというのが、ロイター通信や日本経済新聞をはじめとする民間エコノミストの一致した見方だ。
実際、2015年度に至る過程の日銀見通しも、民間よりかなり高めとなっている。
消費者物価指数の市場コンセンサスは0.3%程度と言われており、今回日銀が発表した0.7%から相当に乖離している。
2014年度はさらに乖離率が広がっており、実際経済というよりも「黒田日銀の決意表明」と評されている。

日本経済新聞社も、日銀の掲げた数字に対しては、「『非現実的』との見方も根強い見通しをあえて示したのは、人びとの物価上昇期待を高め、それを加味した実質ベースの長期金利をマイナス水準も視野に入れつつ引き下げるため」と指摘。
本当に、脱デフレ期待を高められるのかは不透明なままだ。
物価上昇率2%への3つの条件。
いずれも不確実性が高い?
日銀の展望リポートでは、物価上昇への3つのロードマップを示している。
第一に、需給バランス改善による労働需給の引き締まりが賃金を上昇させること。
第二に、日銀の緩和で中長期的な予想物価上昇率が2%に収まること。
第三に、輸入物価が上昇することだ。
しかし、展望リポートはいずれのシナリオについても、「不確実性がある」あるいは「不確実性が高い」と指摘している。

一方、経済の見通しについては、「今年年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる」と指摘。
2014年、2015年の2回の消費税増税後も「生産・所得・支出の好循環が維持され、潜在成長率を上回る成長を続けると予想される」とした。

だが、その物価上昇の背景となる経済情勢の改善についても、海外経済の成長率の高まりや、政府の経済対策で公共投資が高水準で増加し続けること、そして規制・制度改革による潜在需要が掘り起こされることなど、いくつもの前提条件を設けている。
これらがすべて滞りなく実現する可能性は高いとはいえない。

予定される消費税増税もデフレ脱却の大きなハードルだ。
政府は消費税の税率を、2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げる予定である。
しかし、将来不安が消えず、賃金も上がらないなかで消費税増税だけが断行されれば、国内消費が減少し企業の設備投資が抑えられるだけでなく、デフレの大きな要因である「消費者の低価格志向」も維持される可能性がある。
黒田総裁が掲げる物価上昇率目標2%は現実味が乏しい?その結果、今後2年程度で、物価上昇率目標2%を達成するという黒田総裁の言葉とは裏腹に、市場からは現実味が乏しいとの指摘が出ているほか、日銀政策委員のなかでも物価予想の数値、シナリオの実現性については意見が大きく分かれてことが鮮明になった。
物価予想の数値とシナリオを実現させ、市場の期待を押し上げてデフレを脱却するには、政府が掲げる「成長戦略」なども欠かせない存在となっている。

安倍首相は26日の閣議後の閣僚懇談会で、政府内で検討を進めている成長戦略と「骨太の方針」について、6月中旬に英国で開催される主要8カ国(G8)首脳会議の前に策定するよう関係閣僚に指示した。
G8サミットでデフレ脱却に向けた具体的な政策を説明し、各国首脳の支持を取り付ける狙いがある。
安倍政権は金融緩和と機動的な財政政策に続いて、大胆な規制緩和などに基づく成長戦略を「3本目の矢」と位置づけ、政府の産業競争力会議が具体策を協議している。
が、逆にいえば政府が描こうとしている成長戦略は、6月まで棚上げされたままということになる。
それらを総合的に鑑みると、今回の黒田日銀の展望リポートは、2年で2%という物価上昇シナリオを市場に信じ込ませるまでには至らなかったと言えよう。
市場関係者から早くも追加の金融緩和の声。
黒田バズーカ砲、第二弾か?
このような背景から、早くも市場関係者からは日銀の追加緩和策に踏み切るのではという観測が飛び交っている。
物価見通しのハードルが高い上に、その前提条件の不確実性も高く、今後2年間という短期間のなかで、インフレ見通しが大きく下振れるような展開になれば、日銀が追加緩和や軌道修正を柔軟に行わざる得なくなる。

「まずは2013年度の予想達成が難しい程度にまでしか物価が上昇していなければ、さらなる緩和があるとみるのが自然だ」という声も上がっている。
今回の日銀の政策決定会合で、今後の金融政策については、「物価安定の目標の実現を目指し安定的に持続するために必要な時点まで『量的・質的金融緩和』を継続する」と表明した。

日銀は4日、長期国債の大量購入などで資金供給量を2年で2倍に増やす「異次元の金融緩和」を決めた。
これが需要を刺激し、2015年度中に物価に強い上昇圧力が加わり2%が実現する可能性が高いというのが日銀の説明である。
先の金融緩和策では、国債購入額は従来の2倍、月7.5兆円に増えた。
月々の国債発行の7割に相当する額を市場から吸い上げる。
新しい国債買い取りは、そのあまりの強力さに「黒田バズーカ砲」と呼ばれた。

物価上昇率2%に届かないとするならば、さらなる第二弾の「黒田バズーカ砲」があるかもしれない。
名目金利はすでに超低水準であり、下げ余地が限られる。
しかし、物価変動を加味した実質金利にはマイナス値もあり得るため、まだ下げる余地もあるといえよう。
日銀はそこに着目している。
第二弾「黒田バズーカ砲」が出てくる可能性は捨てきれない。
そうなれば、さらなる円安・株高の先高感も強まるであろう。

日経ニュース・朝版(4/28)

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