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2013年8月3日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(8/3)

◆年末に算出が始まる新株価指数とは一体何なのか?先月30日、日本経済新聞社と日本取引所グループ、東京証券取引所が共同で開発を進めている、新たな株価指数の骨子を発表しました。
■東京証券取引所 共同開発中の新指数に係る骨子についてhttp://www.tse.or.jp/news/17/130730_b.html
具体的な構成銘柄など新指数の詳細は秋に正式発表され、年内に算出が開始される予定ですが、本日は日経平均株価やTOPIXに並ぶ新たな投資のベンチマークを目指すという新指数の内容を、少し先回りして考えてみたいと思います。
新指数の最大のポイントは、企業の「財務指標」を銘柄選定の主な要素とするということです。
前述した発表資料では、具体的な財務指標としてROE(自己資本利益率)が記載されていますが、日本取引所グループの斉藤CEO(最高経営責任者)も会見でROEを軸にすることを明言していますので、新指数がROEの高い銘柄を中心にしたものになることは間違いないでしょう。
◆ROEが指数の採用条件に!スクリーニングしてチェックしてみよう!ROE(return on equity)は、自己資本利益率と呼ばれる指標で、自己資本を使ってどれだけの利益を上げたのかという、企業の収益性を測る指標です。
■ROEの計算式(当期純利益÷自己資本)×100(%)
より少ない資本で、大きな収益を上げている企業ほどROEが高くなる、ということであり、数値が高い方が良いとされています。
東証1部上場企業全体の前年度ROEは6%程度ですから、2013年度の予想ROEは多少改善すると見込まれているものの、現状では10%を超えているのであれば、ROE面から見て優良企業であると言えるでしょう。
発表資料によると、新株価指数は最大で500銘柄程度で構成される見込みとなっています。
ROEが10%を超えている銘柄は、前期末で約850銘柄。新指数のもう1つの選定基準である「市場流動性」を考慮すると、時価総額と出来高・売買代金で、一定の基準に満たない銘柄を除外するだけで、新株価指数の採用銘柄が見えてきそうです。
では、どのような銘柄が採用されそうなのか、ROEランキングを見てみましょう。
■ヤフーファイナンス:ROEランキング(全市場)http://info.finance.yahoo.co.jp/ranking/?kd=55&mk=1&tm=d&vl=a
いかがでしょう。日経平均株価やTOPIXと比べると、かなり違った銘柄が並んでいますね。特に上位100社で言えば65%が東証1部以外で、かなり新興市場寄りの指数になりそうなイメージです。
もちろん、「市場流動性」の基準を厳しくするほど大型株の比率は高まりますし、コーポレートガバナンス(企業統治)の取り組みも考慮されるそうですから、あくまでも予測ですが東証1部銘柄の比率は50%以上にはなるのではないでしょうか。
さて、新株価指数の採用銘柄となれば、日本経済新聞社と日本取引所グループ、東京証券取引所が認めた「財務指標が良好な企業」として注目され、人気を集めることになるでしょう。将来的には指数に対応したインデックスファンドの買いも期待できます。
投資家としては、あまり注目されていない銘柄を仕込んでおいて、上昇を狙いたいところですが、投資妙味のある銘柄はROEランキングを見る限り、かなりたくさんありそうです。
条件としては、ROEランキング(全市場)で10%以上、平均売買代金3億円時価総額100億円程度でスクリーニングすれば、おおよその銘柄が出てくるでしょう。
◆借金をすればROEが高くなる?危険な銘柄を買わないためには?高ければ高いほど良いというROEですが、必ずしもそう言い切れるわけではありません。ここからは、危険な銘柄を選んでしまわないように、少しROEの勉強をしてみましょう。
前述のように、ROEは(当期純利益÷自己資本)×100(%)で算出されますが、これを3つの要素に分解すると、以下のようになります。
■ROEの3要素分解(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)
=当期利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
この3つの項目のうち、前の2つは比較的分かりやすい指標です。当期利益率は、売上高に対してより多くの利益を上げることで数値が良くなりますし、総資産回転率は少ない資産で多くの売上高を上げることで、改善していきます。
この(当期利益率×総資産回転率)は(当期純利益÷総資産)となりますが、これはROA(総資産利益率)という、ROEと並ぶ一般的な指標です。
問題は、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)です。
ROEを高くしようとするならば、財務レバレッジも高い方が良いわけです。しかし、この財務レバレッジは総資産に対して自己資本が少ないほど、数値が高くなります。
実は、財務レバレッジというのは、企業の安全性を示すとされる自己資本比率(自己資本÷総資産)の逆数で、自己資本比率が低い企業ほど数値が高くなるのです。
つまり、ROEという指標は自己資本比率の低い(安全性の低い)企業の方が数値が高くなるものなのです。
このように考えていくと、単純にROEを高くするだけであれば、借金による資金調達を増やす(負債比率D/Eレシオを高める)ことで、ROEが高くなることが分かります。
先ほどのROEランキング上位には、おそらく負債の比率が高い(自己資本比率が非常に低い)銘柄もたくさん含まれているでしょう。
もちろん、負債比率は倒産の危険が意識されない程度まで高めた方が、資金効率が良くなります(最適資本構成)が、あまりにも自己資本比率が低い銘柄は投資対象としては外した方が安全です。
銘柄のスクリーニング条件としては、先ほどのROEランキングと平均売買代金、時価総額に加えて自己資本比率を条件とした上で、銘柄を選んでいくことで、投資妙味のある銘柄が見えてくるのではないでしょうか。
◆ROEが低いのは国民性?面倒な分析は株とまとにご連絡を日本企業のROEは欧米に比べて低いと言われています。東証1部上場企業の前年のROEが6%程度であったのに対して、世界平均は22%。米英はともに28%ですから、確かにROEだけで見れば、株主からの資金を有効に活用していない、という指摘も理解できます。
しかし、負債を増やして利益に変えていくことで高まるROEという指標が低いというのは、決して日本企業の収益力が弱いわけではなく、文化や国民性によるものも影響しているのではないでしょうか。
今回、新指数の銘柄選定条件にROEをピックアップしたのは、おそらく企業にROEをもっと上げるように促す目的があると思います。そして、ROEが高まることによって、海外からの投資資金流入が増加させようという狙いもあるでしょう。
今後、新指数の算出開始によってROEという指標の注目度は高まってくるでしょうから、本日は一足早く注目指標ROEの勉強をしていただきました。
もちろん、このような分析が面倒だという方のために我々のサービスがありますので、今回のコラムでご興味を持った方は、ぜひご連絡をいただければと思います。
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