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2013年10月19日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(10/19)

◆米国議会の茶番は終わったものの、問題は年初に先延ばしマーケットを混乱に陥れた米連邦債務の上限引き上げに関する法案が、ようやく可決された。17日の期限まで残り数時間に迫った16日深夜の、ぎりぎりの可決だった。今回の法案成立によって、政府資金は来年2014年1月15日まで手当てされ、連邦債務の上限は2月7日まで引き上げられる。16日間に渡って閉鎖された政府機関も再開され、ようやく平時に戻ったが、正直に言って、今回も「また米国議会の茶番に付き合わされた」という徒労感で一杯の投資家も多いだろう。加えて、平時とは言っても政府機関の閉鎖によって発表が延期された経済指標は未発表のものが多く、連邦債務の上限引き上げも来年の2月までであり、年明けにも再び今回と同じような混乱が起こる可能性がある。◆雇用統計の発表は22日(火)政府機関閉鎖で延長されていた指標を確認米国の財政問題については今後も継続して監視する必要があるとして、今回の財政協議によって不透明感が増したのが量的緩和の縮小の行方だ。量的緩和の縮小は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で開始されるとの見方が多かった。しかし、雇用情勢の回復具合を慎重に見極めるために縮小開始は見送られた。9月の時点では少なくとも年内に緩和が縮小されるとの見方が大勢だったが、今回の政府機関閉鎖によって、雇用情勢を見極める最重要指標の雇用統計が発表されていないため、ここにきて緩和縮小が来年にずれ込むのではないか、という見方が出てきている。ではここで、月初からの政府機関閉鎖によって延長されていた経済指標と、改めて決まったその発表日を確認しておこう。雇用統計(9月分) 10月22日(火)生産者物価(PPI)10月29日(火)消費者物価(CPI)10月30日(水)実質所得       10月30日(水)雇用統計(10月分) 11月8日(金)未定 小売売上高住宅着工件数通常、雇用統計は第一金曜日(正確には、12日を含む週を締め切りとして3週後の金曜日)に発表されるが、11月1日発表予定だった10月分も1週延期されることとなっている。今回の政府機関閉鎖の影響で、雇用統計における雇用者数や失業率の正確性が失われる恐れがあるとの指摘もあり、FRBはこうした不確実性の残る指標によって、量的緩和の縮小という重要な転換点となる意思決定を行うことはできないだろう。◆次期FRB議長のイエレン氏は緩和を進めるハト派。緩和縮小への影響は?では、量的緩和はいつになるのだろうか?ポイントとなるのが、次期FRB議長に指名されたイエレン氏の動向だ。今月9日、財政協議の混乱が続く中、オバマ大統領は来年1月末で任期を迎えるバーナンキ議長の後任として、ジャネット・イエレン副議長を指名した。FRB100年の歴史の中で初の女性議長で、量的緩和に積極的なハト派として知られている。つまり、「金融引き締めによるインフレ抑制」よりも「インフレリスクを踏まえても、失業率を引き下げる」戦略を重視した人物だということだ。米国は依然として世界の中心的な役割を担っており、その中央銀行総裁がどのような金融政策を重視するのかは、マーケットの動向を予測する上で非常に重要な要素である。◆量的緩和の縮小開始時期が再び不透明に!来年3月が現実的か?さて、今回の政府機関閉鎖によって、エコノミストの間でも量的緩和の縮小時期を巡って意見が割れている。次回10月29−30日のFOMCはほぼないが、可能性としては12月・1月・3月のいつになるのかは不透明だ。前述のように、今回の法案では政府資金は来年1月15日まで、連邦債務の上限は2月7日まで引き上げられることが決定した。つまり、年明け早々にも米与野党の協議が行われる可能性が高いということである。一部のエコノミストは協議の混乱が繰り返される前の12月に量的緩和の縮小が実施されると考えているようだが、9月に緩和縮小を開始しなかったFRBが、10月、11月と正確性に疑問が残る雇用統計の結果を見て、12月に決断を急ぐだろうか。そうすると、次は1月だが日程的には28−29日の開催予定で、1月末で退任するバーナンキ議長とイエレン新議長の交代時期。さらに、連邦債務の上限引き上げが2月7日までであるから、与野党の対立が強まっている可能性もある。したがって、新議長のイエレン氏がハト派であることも考慮すれば、3月の緩和縮小開始が現実的なのではないだろうか。◆来年は年初から波乱の展開。そのとき狙うべき株とは?量的緩和の縮小が当初見込みの9月から先延ばしになるということは、短期的に見れば株式市場にとってプラスとなる。一方で、為替市場ではドル安傾向が継続し、円高圧力が強まることとなる。もちろん、株式市場や為替市場の動向はこれだけで決定するものではないから単純に言うことはできないが、もしも12月に量的緩和の縮小開始となれば、米株式市場には短期的にはマイナス要因、一方で為替市場では円安進行によって日経平均株価の下支え材料となるだろう。いずれにしても、現状では年末から年明けにかけて再び先行き不透明な状況となる可能性が高そうだ。ただ、そのような状況になるのであれば値動きの軽い銘柄で短期の値幅を狙うだけであるし、早期に緩和縮小が決まるのであれば、中期で持てる好業績銘柄に資金をシフトさせるだけだ。相場は予測するものではなく対応するもの。考え得るすべての可能性を考慮しつつ、そのときベストな戦略を取れば良いのである。

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