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2013年9月14日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(9/14)

◆ダウ平均の3銘柄同時入れ替えは約9年半ぶり9月10日、米国のダウ工業株30種平均(ダウ平均)の銘柄入れ替えが発表されました。新規に採用されたのは、投資銀行大手ゴールドマン ・サックス・グループ、クレジットカード大手ビザ(VISA)、スポーツ用品大手ナイキの3銘柄です。一方、除外されたのは銀行大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、パソコン大手ヒューレット・パッカード(HP)、そしてアルミ大手アルコアです。ダウ平均採用銘柄の入れ替えは、米産業界の変化を正確に反映し続けるために実施されるものであり、今回の入れ替えによって米国の現状が見えてきます。また、今後のダウ平均の値動きにも影響が出てくるでしょう。◆新規採用銘柄がダウの構成率上位に!アップルは今回も見送りダウ平均の算出方法は、時価総額加重平均ではなく価格加重平均です。簡単に言えば、株価の高い銘柄の影響力が大きいということです。日経平均株価も同様の算出方法です。現状の株価水準において、最もダウ平均への影響が大きいのはコンピュータ大手のIBMです。(12日終値190.73ドル)一方、今回除外された3銘柄はダウ平均採用30銘柄の中で株価の低い3銘柄でした。(アルコア8.16ドル、バンカメ14.48ドル、HP21.96ドル)今回採用されるビザとゴールドマン・サックスの株価は、それぞれ185.06ドル、163.35ドルで、ダウ平均への影響度としては2番目と3番目の大きさになります。(ナイキは68.08ドルで16番目)さて、ダウ平均を米国の産業界全体を見渡す指数とした場合、現状の米国最大企業であるコンピューター大手アップルが採用されて然るべきなのですが、株価が高過ぎるために採用が見送られています。アップルが採用されればダウ平均への影響度が大きくなり過ぎて、指数としての連続性を保つことが難しくなるからです。日本でも先日、日経平均株価の定期入れ替えが発表されました。注目だった任天堂<7974>は不採用となりましたが、同社が採用されなかった理由も株価が高いため(値がさ株)、日経平均株価への影響が大きくなってしまうことが一因でしょう。◆さようならアルコア・・・消える先行指標今回除外された3銘柄の中でも、アルコアは1959年以来50年以上もダウ平均の採用銘柄であり続けました。(HPは1997年から、バンカメは2008年から)値がさ株の影響が大きいダウ平均において、低位株のアルコアの影響は小さく、また株価も全体相場に比べると低調な推移が続いていましたから、除外も仕方ないとはいえ、感慨深いものを感じる証券関係者は多いでしょう。また、アルコアはダウ平均採用の30銘柄の中で最も早く決算を発表することから、同社の決算が良好なものであれば、その後に発表される主要企業の決算も良いものが続くと予想できる、いわば主要企業の決算動向の先行指標となっていました。アルコアの除外によって、米国の決算シーズンにおける動きが変化し、マクロ分析において少なからず影響を及ぼすはずです。余談ですが、ダウ平均に最も古くから採用されているのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)です。1896年の指数算出開始時に採用されていた12銘柄の1つです。よく複合大手(コングロマリット)と表現されるように、業態は多種多様で、一般的には今回新規に採用されたナイキやビザよりも馴染みは薄いかもしれません。ちなみに、創業者は発明王トーマス・エジソン。また、同社のCEO(最高経営責任者)には「20世紀最高の経営者」に選ばれたジャック・ウェルチがいます。◆ダウ平均30銘柄のうち金融株が5銘柄。金融色の強い指数に。さて、今回の銘柄入れ替えでは、バンカメが除外されたものの、投資銀行ゴールドマン・サックスとクレジットカード大手ビザの金融株2銘柄が採用されました。これで金融大手JPモルガン・チェース、クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス(アメックス)、保険大手トラベラーズと合わせて、金融関連株は30銘柄中5銘柄となります。加えて、ビザとゴールドマン・サックスは前述のようにダウ平均の影響が大きくなる値がさ株であり、今回の採用銘柄入れ替えによって、ダウ平均は以前よりも金融色が強まり、金利や金融政策の影響が大きくなったと言えます。◆FOMC明けの投資戦略は?FRBの金融政策にはより一層の注目を週明けの金融イベントとして、17−18日に注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。焦点は、量的緩和(QE)の縮小開始。FRB(米連邦準備理事会)が金融緩和から引き締めに舵を切れば、投資資金がマーケットから離れていくことになります。ただ、次回FOMCで緩和縮小に踏み切るかは不透明です。近いうちに縮小が開始されることは既定路線とはいえ、それが9月かというと株価にはまだ6〜7割程度しか織り込まれていないでしょう。したがって、来週のFOMCで緩和縮小が開始されれば、「短期的」にはマイナスの影響を及ぼす可能性が高いと言えます。一方、マイナスの影響を「短期的」としたように、量的緩和の縮小は中長期のトレンドを下向きにさせる決定ではありません。なぜなら、金融緩和は正常な経済に戻すための対処方法であり、緩和が縮小されるということは、経済が正常に戻りつつあるという判断をした証明になるからです。例えるなら、病気が治ってきたので薬の量を減らすということです。このように考えていくと、今後の投資戦略としては緩和縮小で下がったところを狙って買う、というのがベーシックなシナリオになりそうです。もちろん、9月に緩和が縮小されなかった場合や、緩和縮小でも株価がそれほど下がらなかった場合など、複数のシナリオが考えられますが、これらはそのとき柔軟に対応していくことになります。いずれにしても、未来は誰にも分かりませんので、安定的に利益を出していくためには、いくつかの戦略と対応できるだけの柔軟さを持つ必要があるのです。

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