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2013年3月2日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(3/2)

イタリア総選挙の結果で欧州不安が再燃世界の株式市場に冷や水を浴びせたイタリアの総選挙。
財政状況の悪化が深刻なPIIGS(ポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペイン)の1国として財政緊縮を進めてきたイタリアですが、総選挙の結果によって、再び財政悪化が懸念されています。

では、イタリア総選挙のポイントである緊縮財政支持・反対派の4つの政党連合をまとめてみましょう。

■緊縮財政支持派中道左派連合(中心:ベルサーニ民主党党首)中道連合(中心:モンティ首相)
■緊縮財政反対派中道右派連合(中心:ベルルスコーニ前首相)五つ星運動(中心:コメディアンのグリッロ氏)
下院では、財政再建・緊縮策を支持する民主党のベルサーニ党首率いる中道左派連合が29.54%の得票率を獲得。

ベルルスコーニ前首相が率いる反緊縮財政派の中道右派連合(得票率29.18%)との差はわずかだったものの、下院では最多得票を得た政党に340議席が与えられることから、中道左派連合が過半数を獲得する結果となりました。

一方、上院では中道左派連合が121議席にとどまり、中道右派連合が117議席、五つ星運動が54議席を獲得。
緊縮財政を指示する中道連合が19議席となったため、連立でも中道左派連合は上院で過半数を得られませんでした。

イタリアでは政権の樹立に上院・下院それぞれの承認が必要なことから、緊縮派と反緊縮派が大連立で合意できなかった場合は、首相指名ができなくなり、再選挙の可能性が高まります。

中道右派は中道左派との連立を検討する旨の発言をしているものの、政策の隔たりは大きく協議難航が予想されており、五つ星連合はすでに連立拒否の姿勢を表明しています。
為替・株式市場は選挙結果で瞬間的に急落!総選挙の結果を受けて、イタリア10年国債の利回りは0.4ポイント上昇し、4.7%となりました。
また、イタリアと同じく財政悪化懸念が強いスペイン国債の利回りも上昇しています。

また、為替市場ではユーロが急落。
選挙結果判明前に1ユーロ=125円台だったユーロ円は数時間後には118円台まで暴落する動きとなりました。

リスク回避の動きは対ドルでの円買いにもつながり、ドル円も同じく1ドル=94.5円から91.0円まで急落しています。

直近の為替市場は落ち着きを取り戻してはいるものの、イタリア政局の混乱は今後もしばらく世界の株式・為替市場にとってのリスク要因となっていくことでしょう。

ESM(欧州安定メカニズム)など安全網の構築や、ECB(欧州中央銀行)による国債購入スキームによって、足元の欧州不安は和らぎつつありましたがイタリアの政局不安が新たな欧州債務不安の火種となる可能性は否定できません。

もちろん、足元の国債利回りは4.7%と危険水準とされる7%を下回っており、すぐにリスク回避の動きが鮮明になる可能性は少ないでしょうし、マーケットも次の動きを見定めている状況です。

ただ、大連立が成立するにしても再選挙が実施されるにしても、長期政権となる可能性は極めて小さく、市場にとっての重荷となり続けることになりそうです。
米国の強制歳出削減の発動も長期的なの懸念材料にイタリアと並んで市場の懸念となっていたのが、3月1日に発動される米国の強制的な歳出削減です。
これは、米国の財政再建を確実に実行するための枠組みで、毎年1100億ドル(総額1兆2000億ドル)の削減額となっています。

IMF(国際通貨基金)は、強制削減が発動された場合、2013年の米国成長見通しを0.5%引き下げるとしており、28日に与野党は発動回避のため、それぞれ法案を提出したものの、いずれも否決されてしまいました。

以下が与野党の法案内容です。

与党(民主党)案:強制的な財政削減を回避する代わりに、富裕層の増税や農業関連の助成を廃止する。

野党(共和党)案:財政赤字削減のための増税には反対。
強制削減を発動させ対象を絞った歳出削減案を提出する。

結局のところ、(富裕層に対する)増税を実施するか強制削減を発動させるかということになりますが、どちらも妥協する様子はなく、マーケットでは歳出削減の強制発動を見込んだ動きとなっています。

また、世論調査でも歳出削減の実施を肯定する意見が過半数を占めており、突然、為替や株式市場が急変動する可能性は小さいでしょう。

歳出削減による影響がすぐに出ないとはいっても、毎年1100億ドル(約10兆1000億円の削減ですから、実務面での幅広い問題が予想されます。

特に、削減額の半分を占める「国防費」においては、歳出削減が実施されれば、職員を一時帰休させる予定で、海軍活動や税関手続きなどの停滞が見込まれています。

ただ、たとえ強制的な歳出削減が実施されても、法定上限の引き上げに関しては5月まで延長されているため、マーケットに緊迫したムードはあまりないようです。

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