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2013年4月20日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(4/20)

ワシントンでG20が開幕。
日銀の金融緩和は世界から認められるのか?
先進国と新興国による20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が18日夜(日本時間19日朝)、ワシントンで開幕した。
日銀の「異次元の金融緩和策」に関心が集まる中、初参加の黒田日銀総裁はデフレ克服に向けた取り組みをアピールし、各国は通貨安競争の回避を改めて確認する。
会議では欧州債務危機の再燃など世界経済の下振れリスクについても点検する。

G20に先立つ形で、麻生財務相は18日午後(日本時間19日早朝)、米国ワシントンでルー財務長官と会談。
G20が2月に合意した「通貨の競争的な切り下げを回避する」との方針を堅持することで一致した。
安倍政権の発足後、日米の財務相が直接会談するのは今回が初めてである。
会談で麻生財務相は日本の緩和策はデフレ脱却に向けた方策で、「円安誘導ではない」と改めて米国側に理解を求めた。
麻生財務相は国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事らとも会談し、金融緩和策に理解を求めた。

会談に続いてG20財務相・中央銀行総裁会議も同地で開幕。
日銀の黒田総裁は開幕に先立ち、現地で記者団に日本の金融緩和策について「2%の物価安定目標を達成するためと説明するつもりだ」と語った。
「通貨安ということは全く意図していない」と述べ、円安誘導との批判は当たらないとの考えを強調した。

「新興国から日銀の金融緩和が自国経済に悪影響を及ぼすとの批判が出るのではないか」との問いには「そういう議論はあまりないと思う。
(日本の政策は)広く理解されている」と指摘。
「新興国というのは一概に言えないが、それらの国で一般的にバブルが起こっているとか、起こりつつあるとは思っていない」、「日本だけでなく欧米も大幅な金融緩和を続けており、それが新興国への資本の流入などの影響をもたらすことは十分考えられる」、「(金融緩和の新興国への波及問題については)G20が前から議論しており今回も議論はあると思う。
先進国も自国の経済政策が新興国その他に及ぼす効果について考慮・検討する必要は当然ある」と述べて、日本側の説明は各国の理解を得られるとの認識を示した。
日銀の金融緩和について「会議の場で反論はなかった」G20は19日午後(日本時間20日未明)に共同声明をまとめて閉幕する。
共同声明では、前回合意した「通貨の競争的な切り下げを回避する」との方針を再確認する。
日本など先進国の金融政策が新興国に悪影響を及ぼさないか、G20として監視することでも改めて一致する。
日本と米国には中期的な財政健全化の促進も求める方向だ。

麻生財務相は18日夜、初日討議終了後に記者会見し、「日本経済の再生は世界的に好影響を及ぼす」と各国当局者へ説明し、日銀が導入した新たな金融緩和策などの理解を求めたことを明らかにした。
出席者から「会議の場で反論はなかった」ということから、金曜日の外国為替相場ではドルが強含み、円安方向に多少振れ、後場の株高を演出した。

会議では、日本の金融緩和が議論に上がり、欧州委員会のレーン委員は、日本の景気刺激策に理解を示す一方、日本は財政再建や構造改革といった中・長期的課題に取り組む必要があると指摘。
「日本政府の遅い成長とデフレへの懸念は理解できる」とし、成長支援と長期にわたるデフレからの脱却に向けた刺激策にメリットがあることは分かると述べた。
金融緩和は理解されても、財政再建と成長戦略は不十分?ただ、信頼できる長期的な財政再建計画の策定と、持続可能な成長や雇用創出に寄与する構造改革に関する決断という課題に日本が直面していることに変わりはないとも指摘している。

IMFのラガルド専務理事は、「日本から最近発表された野心的な金融緩和の枠組みは前向きな一歩。
ただし、それだけでは十分ではない。
日本は景気のギアを高めるために、債務削減と構造改革を合わせたより野心的な計画が必要だ。
安倍首相が掲げる三本の矢の、その他の2本の矢が実行に移されることを待ち望んでいる」と述べ、財政戦略と成長戦略が不十分との見方を示した。

ラガルド理事は、今回のG20やIMF・世界銀行春季会合で、世界経済の回復状況とともに「新たなリスク」を点検すると表明。
その上で、主要国間で成長スピードが、
(1)高成長を維持する新興国(2)成長が加速しつつある米国(3)懸案解決にほど遠い欧州と日本
に3極化しているとし、こうした成長格差は「健全とは言えない」と述べた。

今回のG20で、安倍政権の金融緩和政策は各国の理解を得られたが、財政戦略と成長戦略については、十分な理解を得られなかったとも言えよう。
「三本の矢」の成長戦略が明確でない「株高=円安」の危うさとは?「三本の矢」と銘打って大々的に宣伝した景気政策の肝心要の1つである「成長戦略」が未だ明かされず、6月まで「お預け」状態になっていることから、「口先先行型」の「株高=円安」現象の危うさが指摘されつつあるのは事実である。

成長戦略とは、経済の一時的ではない持続的な成長力を高める政策である。
成長戦略そのものは、自民党時代も含め歴代の多くの政権が努力目標として掲げてきた。
民主党政権以下だけでも、「新成長戦略(2010年6月)」、「日本再生戦略(2011年8月)」、「日本再生の基本戦略(2011年12月)」、などがあげられよう。
成長戦略を実現するための司令塔として、国家戦略室という組織も新設されたこともある。

しかし、経済の持続的な成長力を高めて日本経済再生を実現するために何をすべきか、実はどの政権が決めても大きな差はない。
ある意味で、類似の努力目標だったともいえる。
問題は、「なぜほとんど実現できなかったのか」にあるのではないだろうか。

実現できなかった成長戦略の例として、たとえば少子化の改善がある。
少子化が問題視されたことで2006年には担当の大臣まで設置された。
しかし、出生数減少のトレンドに変化はない。
また、高齢化にあわせて介護産業の発展を試みたこともある。
しかし、介護保険の逼迫する財政状況や介護業界の厳しい労働環境から、人手不足が壁となって想定通りには進まなかった。

これまで成長戦略が実現しなかった原因は、その原因が簡単には特定できない点にあるだろう。
たとえば、少子化は未婚・晩婚化、介護産業は介護保険の保険料値上げや介護サービス削減の難しさ……。
他にも、人手不足と生活保護の並存、女性の社会進出の遅れ、ワーキング・プア問題などが指摘できるだろう。
これらは、問題の根が経済の枠を超えた社会的要因にあるため、簡単には解決方法が見つからない。

自民党は、政権公約に「世界で一番企業が活動しやすい国」と「個人の可能性が最大限発揮され、雇用と所得が拡大する国」を掲げて政権を獲得した。
その司令塔として、民主党時代の国家戦略室を廃止して、日本経済再生本部を新設した。
成長戦略がまとめられるのは6月。
歴代政権が解決できなかった絵を描けるか?
だが、その成長戦略がとりまとめられるのは6月。
歴代政権が解決できなかった問題に如何に取組み、どう解決するかの答えはまだ出てきていない。

いまのところ伝えられているのは、地方経済の振興に力を入れた従来の特区制度を見直し、東京・名古屋・大阪の三大都市圏を中心に5〜6カ所の地域を選んで重点的な規制緩和や税制優遇を推進する方針であるということぐらいである。

4月17日に行われた安倍首相を議長とした民間の有識者で構成する「産業競争力会議」では、「空港や有料道路など公営施設の運営権を民間へ移管」、「指定『特区』での法人税大幅引き下げ」、「都営交通(地下鉄・バス)の24時間運行」などが議論された。

だが、これらの分野の対策検討は、日本経済の再生という視点で見ると「枝葉」の議論でしかない。
株高、円安傾向の持続には3本目の「矢(成長戦略)」が極めて重要になる。
「3本の矢」がすべて目的通りの結果をもたらさない限り、デフレ脱却も難しいであろう。

「民間投資を喚起する」と"枕詞"をつけ、甘利明経済財政政策担当相の下に日本経済再生本部を設置、さらにその下に産業競争力会議を設けて、成長戦略策定を行っているが、本当に民間投資を喚起する説得力のある成長戦略が描けるのか。
今回のG20でも、IMFのラガルド専務理事らはいまだ日本の「成長戦略」に懐疑的な姿勢であった。
欧州委員会のレーン委員も、成長支援と長期にわたるデフレからの脱却に向けた刺激策に期待を滲ませた。

現在の円安・株高は将来の成長戦略を見越しての先高である。
これが期待ではなく、本当の「民間投資を喚起する」という意味での成長戦略が軌道に乗り、はじめて株価に実態経済が追いつき、経済再生となる。
安倍首相の手腕に期待したい。

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