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2013年4月6日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(4/6)

黒田日銀総裁の金融政策決定会合で質的・量的金融緩和を発表!日銀が黒田総裁就任後初の金融政策決定会合で量的・質的緩和を導入した。
黒田氏は会合後の記者会見で、「現時点で必要と考えられる措置は全て投じた」と語った。
さらに、新たな金融緩和で供給する資金量は「常識を超えて巨額だ」とも述べた。
物価目標とデフレ脱却という重い課題を達成するには、あらゆる手法を動員し、一刻の猶予も許されないという危機感、切実感が伝わってくる。

金融緩和の具体的な中身は、2年程度で2%の物価上昇率を目指すという名目の元に様々な施策が講じられた。
資金供給量を増やしても投資や消費に結びつかないとした白川前総裁時代の慎重姿勢を転換。
デフレ脱却へ明確な物価目標を決め、大胆な緩和策を一気に実施して企業や個人の期待に働き掛ける。
戦後の日本の金融政策では初の試みだ。

黒田総裁が4日の記者会見で「これまでと次元の異なる金融緩和だ」と強調したように「質的・量的金融緩和」の概念を導入し、金融政策の目標をこれまでの短期金融市場の「金利」から、日銀が供給する「金の量(マネタリーベース)」に切り替えた。
日銀の市中への資金供給量(マネタリーベース)を昨年末の138兆円から2年間で約2倍の270兆円まで増やすと明言し、長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大するとともに、長期国債買い入れの平均残存期間を2倍以上に延長することを決定した。
白川前総裁時代に金融緩和目的で国債などを買い入れるために設置された基金は廃止し、日常の金融市場調節で使う国債購入と一本化した。
日銀の大胆な金融緩和、資産買い入れの増額規模は市場にはサプライズ!市場にサプライズを与えたのは、資産買い入れの増額規模である。
長期国債の毎月の購入額は「7兆円強」になるとの見通しが示されたが、事前にあった5兆円程度との予想を上回った。
ETFの残高が年1兆円ペースで増えるように買い入れるとの方針も想定以上だろう。

ETFとREITの増額について黒田総裁は、「REITの方は、まだマーケットがそれほど大きくないこともあるので、いまの条件のもとではそれほど拡大する余地はない。
ETFはまだいくらでも余地があると思う。
リスクプレミアムを適切に圧縮するために必要にして十分な量をするということなので、2倍というのを決めた」と語った。

これを受けて、日経平均株価は上昇。
ザラ場中に2008年8月29日以来ほぼ4年7カ月ぶりとなる1万3000円台を回復した。
東京外国為替市場では、円相場は大幅に続落。
5日には1ドル=97.20円と円安・ドル高が進行し、2009年8月10日以来3年8カ月ぶりの安値を付けた。
日銀が前日に導入を決めた大胆な金融緩和を背景に、円の先安観が高まり、円は全面安の展開となった。
金曜日の東京株式市場日経平均は日経平均で一時550円超の上昇。
寄り付き前の外資系証券6社経由の注文状況は2590万株の大幅買い越しになり、東証1部売買代金は今年最高の4兆8633億円まで膨んだ。
緩和を進めてきた日銀方針の大転換となるか? 政府は諸手を挙げて歓迎姿勢今回の日銀政策決定会合では「物価上昇率2%の目標は、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と公表文で明記し、大胆緩和の決意を示した。
これまで物価目標の達成時期は「できるだけ早期」と示すにとどめていたが、「2年」と具体的に表現を強めて退路を断った形である。

軸となるのは、効果を見ながら徐々に緩和を進めてきた日銀の方針の大転換である。
日銀が金融機関から国債などを買い入れて資金を市場に供給し、現在138兆円あるマネタリーベースを2年後に2倍の270兆円に膨らませる。
黒田総裁は「政策をわかりやすく伝える枠組みだ」と強調した。

これを受けて、それまでの日銀の緩和策を「不十分」で「量的にも質的にもさらなる緩和が必要だ」と述べていた麻生財務相は、今回の政策決定会合ではそれが大きく変わったと指摘。
従来の枠組みを大きく見直し大胆な緩和策を打ち出した決定内容に、麻生財務相は「量的・質的金融緩和と呼ぶにふさわしい、大胆かつ広範なものと理解している」と述べた。
2%の物価安定目標の実現に向け「まさに次元の違う金融政策に踏み込んだ」として「大いに歓迎している」として「日銀は変わった」と評価した。
甘利経済再生相も「極めて思い切った措置として、高く評価したい。
110点くらいあげたい」と述べた。

菅官房長官も4日の記者会見で「安倍内閣が掲げる大胆な金融緩和に歩調を合わせた政策が打ち出され、大いに歓迎したい」と評価した。
日銀法改正に関しても「政府と日銀の方向性が一致する中で無理やり改正するということもない」との考えを示した。
日銀の掲げる2年で2%の物価上昇率の確保は本当にできるのか?ただ、「物価2%の達成は容易ならざること」と、黒田総裁も4日の記者会見で漏らしている。
日銀が資金供給できる先は主に民間金融機関である。
銀行が貸し出しを増やさなければ、そのお金は日銀に再び預けられて実体経済には出回らない。
白川体制でも量的緩和時を上回る資金を供給したが、銀行の貸し出しは減り続け、デフレからの脱却にはつながらなかった。

民間研究機関でも、2%の物価上昇率を2年で達成するのは簡単ではないとみている。
今年2月の消費者物価指数は0.3%のマイナスにとどまっている。
日本経済研究センターは2年で物価を2%に引き上げるには、新興国並みの4%の実質成長を続ける必要があると試算する。

4月26日の次回会合で日銀は金融緩和がどのような経緯で物価上昇につながるかを丁寧に説明することが重要だろう。
金融緩和は株式市場にとってはサプライズ!次は政府の成長戦略に期待!株式市場では、今回の会合では大きな緩和策は打ち出されないとの見方から、日本株のロング(買い)を外す投資家が増えていただけに、株式市場への影響も大きくなることは想像できる。
4月末から本格化する企業決算で収益見通しが市場の期待を上回れば、日経平均はさらに上を目指す可能性もでてきた。
株式相場は当面、上昇基調を維持するとみられている。
ETFの買い入れ強化は需給面でも大きなプラスだ。

ただし、今回の金融緩和の強化が株価の大幅な押し上げにつながるかというと、そうとは言い切れない。
現在の枠組みで考えられる手段をほぼ打ち出してしまった印象で、今後、追加的に市場に驚きを与えることが難しくなる懸念もある。

望ましい物価上昇の姿は、企業収益や賃金が増えて、結果としてモノの値段も上がる経済の好循環だ。
4月1日に日銀が発表した企業短期経済観測調査では、大企業の設備投資計画が市場の予想に反して前年度比マイナスにとどまった。
株高や円安を演出した金融市場の政策期待が、投資や消費といった実需にどこまで結びつくかが新緩和策の成否のカギとなる。

金融政策のみによる実体経済の押し上げの有効性を実現へと導くには、政府の構造改革で官民あげて潜在的な成長率を高めることが重要になる。
成長期待が高まらなければ、株高効果の持続性も限られる。
日銀は政府の要求に満額回答を示した。
今度は政府が策定する成長戦略の中身が重要になってくるであろう。

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