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2013年1月26日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(1/26)

日経平均は為替相場に一喜一憂。
「1ドル=100円でも問題ない」で大幅高!
今週は日銀の政策決定会合があり、円相場に株式市場も振り回されたが、24日に西村内閣府副大臣が浜田内閣官房参の示した「1ドル=100円でも問題ない」との見解について「共有している」と発言したことで改めて政府の円安容認姿勢が確認され、ドル・円は2010年6月以来の高値水準まで水準を切り上げ、金曜の日経平均株価が前日比306.78円と切り返しをみせるなど、為替相場に一喜一憂する展開となった。

すでに、欧州方面からは22日にバイトマン独連銀総裁が、24日にメルケル独首相が通貨安競争のリスクに言及しているが、日本当局の反論姿勢が続くとの期待から円売りに傾きやすい地合いは続くとの見方が強い。
26日には甘利経済再生担当相が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でアベノミクスについてスピーチを行う予定となっており、安倍政権がデフレ経済脱却に強い姿勢を示すとの期待も円売り要因となる。

日本の通貨政策をめぐっては、海外からの批判が目立ち始めているが、麻生太郎財務相は25日の閣議後の会見で、「金融緩和はデフレからの脱却が目的であり、為替操作との批判はあたらない」と指摘。
「現状の為替の動きは、一方的な行き過ぎた円高の明らかな修正だ」と理解を求めた。
安倍政権の金融政策のブレーン、イェール大学名誉教授、浜田氏の主張!その裏側には、2012年12月に行われた衆議院選挙での政権交代後、安倍晋三首相の金融政策のブレーンとして内閣官房参与に就任したイェール大学名誉教授の浜田宏一氏の存在がある。
金融緩和によって適度なインフレを起こすことが景気回復につながるという"リフレ派"の代表的存在である。

浜田氏の著書『アメリカは日本経済の復活を知っている』で、浜田氏は世界中の中央銀行の考え方を紹介し、日本銀行を批判した。
1月18日に日本外国特派員協会で行った講演では、「2012年11月以降の株高円安は、それまでの日本銀行の金融政策が誤っていたことを示した」とコメント。
今後について、日本の成長率を高めるため、より積極的な金融緩和を行うべきだと主張した。

では、日本の金融緩和は他国といかに違うものなのか。
2012年9月のFRBの会合では、失業率の改善を促進しようと、住宅ローン担保証券(MBS)を月間400億ドル増額することを決めた。
これがQE3として知られているものだ。

日米で違うのは、まず金額の差である。
400億ドルは日本円に直すと3兆円ほどになる。
日米の経済規模を考慮して日本のケースに当てはめると、毎月1.5兆円ほどの資産買い上げをすることになる。
一方、日銀の買い上げは、2012年の額をならすと、毎月8300億円に過ぎない。
これが安倍政権をして、日銀がFRBなどに比べてバランスシートを拡大するペースが遅いという批判の元になっている。

さらに、FRBは「毎月の買い上げ」を宣言しているのに、日銀は「一年間で買い上げできる資産の規模」を示しているに過ぎない。
金融政策はすぐに発動でき、直ちに市場に行きわたるという即効性が特徴である。
なのに、日銀はそれを無視して、来年のことを語ろうとするかのように金融政策を行っていると浜田氏は指摘する。

浜田氏は「円高政策は弱い企業をいじめる政策である」と、日銀を糾弾する。
経済の空洞化を推し進める政策であるのはもちろん、地方切り捨ての政策でもあるともいう。
空洞化の流れで、企業が外国に工場を移転しても、東京のヘッド・クォーターは残る。
結果、工場があった地方は疲弊する。
東京は超円高に耐えられても、地方はそうはいかない。
そう考えれば「大阪維新の会」の支持者が多かったのもうなずける話だと述べている。
日銀は金融政策をおろそかにしてきたのか?財政出動は必要無い?浜田氏は著書のなかで、「日銀は金融緩和を充分にしない」という追及からのがれるため、「貨幣量でなく、人口構成がデフレの原因だと言い訳している」と批判する。
人口構成の問題だけではない。
金融拡張しない理由として財政問題を使うのも、言い訳のひとつであるという。
自分の責任である通貨管理のことを通り越して、財務省所管の財破綻を防ぐために、日銀が所管外の財政破綻を防ぐため努力している、そのため金融政策がおろそかになると言い訳しているというのだ。

また、今月、1月18日に浜田氏が外国特派員協会で行った講演では、以下のような趣旨の発言も行っている。

●金融政策について「これまでずっと、金融緩和政策によりインフレをわずかに起こすことが重要と説いてきたが、なかなか理解してもらえなかった。
一方で人口増が経済成長には必要なのは間違いないが、人口減がデフレの要因であると言った人は、まともな経済学者では存在しない」
「マンデル=フレミング理論がベースになっているが、この説では、完全雇用ではないときには財政政策も金融政策も必要だが、特に為替が変動相場制のときは金融政策の方がより重要になる」
「リーマンショック後の各国中央銀行のバランスシート変化率を見ると、米英や欧州は大盤振る舞いの拡張を行ったが、日本だけは拡張しなかった。
安全資産と見られた日本国債に資金流入した影響はあるものの、リーマンショック後に円だけが20〜30%も割高になったのは金融緩和の差が大きい。
反対に韓国はウォン安となっており、韓国との競争では60〜70%の円高のハードルをクリアしなければならなくなった。
これではいくら生産性を上げても追いつかず、それでエルピーダメモリはつぶれた」
●財政政策について「金融を緩めて何も効かなくなったとき、初めて財政出動が必要になる。
どちらかというと、財政政策は副次的な役割だと思っている」
「ゼロ金利以外のときは、財政支出は経済を刺激しない。
本当に必要な公共事業はやるべきだが、財政政策には否定的だ」
「一抹の不安があるとすれば、財政政策がないと金融政策は効かないと思っている閣僚がいることだ」
「私の考えは少し極端で、クルーグマンやウッドフォードなどの優秀な経済学者はゼロ金利になれば財政出動が必要と言っている。
ただ、日本は現在のような財政危機の中、大盤振る舞いの補正予算などを組んで、将来の大増税につながらないかを心配している」
●成長戦略について「日本経済を強くするためには政府の介入より、竹中教授が言うように構造改革でやったほうがいい」
変動相場制ではケインズ経済学は「まったく正しくない」のか?浜田氏は東京大学の経済学部で、法学部や経済学部の将来、官僚や政治家になる人を教えてきた。
現在の政治家、日本の主たるジャーナリストなどは、不況の時には財政政策しか効果が無いという昔のケインズ経済学を軸に教えられていた。
もちろんケインズはいろんな意味で正しい側面を持っていたのであるが、浜田氏は「それは固定相場制の時には正しかったが、変動相場制の時にはまったく正しくない」と考えている。

アベノミクスを支える浜田氏の考えは、基本的にはマンデル=フレミング理論に則ったものである。
「経済学は、完全雇用ではないところでは財政政策も金融政策も必要であるが、特に変動相場制では金融政策が主とならないといけない。
これは200年かけて経済学がやっと到達した知恵の1つである」と言い切っている。

マンデル=フレミング理論とは、総需要の大きさが生産水準を決めるというケインズ経済学の枠組みを前提として、貿易と国際的な資本移動とが行われている場合の国民所得決定のメカニズムを明らかにした理論である。
1960年代にロバート・A・マンデルとJ・マルコス・フレミングが開発したモデルであり、財政赤字が拡大すると実質長期金利が上昇し、設備投資や住宅投資が減少する。
また、実質長期金利が上昇すると国内への資本流入圧力が生じて自国通貨が増価し、輸出が減少して輸入が増加するためGDPが減少する。
よって、変動相場制のもとで景気回復や雇用を増やすには、財政政策よりも金融政策が効果的だという理論である。
浜田理論と相対する麻生財務相を代表とする政府の財政出動派しかし、浜田氏の金融が主であり、財政は従であるという考え方とは別に、大規模な財政出動があることが安倍政権の経済政策の特徴である。
今回の日銀の政策決定会合でいったんは出尽くしから円買い・株安を招いたが、西村氏を通じた浜田氏の発言により、円安・株高に巻き戻しにつながったとも言えるだろう。

安倍内閣のなかでは、麻生副総理は金融も大事かもしれないが、金融政策の効果がないのだから財政が出動するしかないと公言している。
つまり、ケインズ経済学と考え方が似ていると言えるだろう。
このあたりは浜田氏と麻生副総理とは考え方が異なるといえる。
しかし、実際問題として大規模補正予算などの財政出動の裏付けがあったから、無制限の金融政策という発言に市場が反応したのではないだろうか?
安倍総理は3本の矢を主張しているほどであるから、財政出動も重視するのだが、その一方で、先ず口にしていたのは物価目標値の設定や日銀とのアコードである。
そこだけを見れば、より金融政策を重視していると思われ、その意味では浜田氏と近い。

だが、金融と財政をミックスした劇薬を施しているからこそ、市場が熱狂するのである。
と同時に、後々のインフレの可能性や政府の借金など副作用も大きなものになることを見逃してはならない。
アベノミクスの第一幕は幕を閉じ、舞台は来週以降の通常国会へ……米国はオバマ政権が始まって以降、何とかこの「金融の暴走」を抑えようと、ボルカー・ルールの設定などのチャレンジに乗り出したが、金融産業の反発によりうまくいっていない。
金融緩和をしても、あるいはインフレ率が健全な水準を取り戻してさえ、失業率を下げられない事態に陥ることになる。

米国のバーナンキFRB議長が「失業率6.5%」という目標を提示したが、金融政策のみで達成できるとは思えない。
中央銀行は、発行した通貨が「何に使われるのか?」についてまでをも左右することはできない。
中央銀行が発行した通貨が「雇用創出」に使われなければ、当然ながら失業率は改善しない。

オーソドックスな新古典派経済学者達は、中央銀行が発行した資金の使い道は市場に決めさせればいいという考え方だ。
資金が向かった先に雇用が生まれるという考えであるが、先物取引にどれだけ巨額のマネーが流れ込んだところで、米国の失業率改善には役に立たないことを証明してしまった。
その点、クルーグマンは「中央銀行が発行した通貨を、政府が借りて雇用が生まれるように使うべき」と主張しているのである。

金融緩和を実施し、デフレから脱却させれることによって……つまり、物価上昇率をプラスにすることによって、どうして景気がよくなると言うことができるのか。
この点では、麻生副総理と浜田内閣官房参の間にはかなりの距離があるように見える。
小さい政府、減税、規制緩和……といった小泉構造改革によって混乱に陥った経済をどう立て直すのか、安倍首相の判断にかかっている。

成長戦略を政府による「財政政策に頼らない」という浜田氏の主張が通るのか、ある程度の財政出動を伴わせるクルーグマンや麻生副総理のような考えを執るのか。
それは遠からず、過去最大の93兆5000億円程度とも言われる、2013年度予算概要の審議や、日銀総裁の交代、場合によっては日銀法の改正などによって明らかになってくるだろう。

いずれにせよ、日銀政策決定会合を舞台としたアベノミクスの第一幕は、幕を閉じた。
舞台は、来週28日に招集される通常国会での予算審議に移ることになる。
そして、米国では本格化している決算発表の波が日本にも訪れることになるだろう。
上方修正、下方修正など、個別の決算に左右されづらい神経質な相場展開が予想される。
為替相場による全体相場の強弱はあるだろうが、基本的には企業の決算を素直に評価する流れになるであろう。

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