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2013年1月19日土曜日

証券ディーラー「プロの視点」(1/19)

株式市場は甘利、石破発言による円相場に一喜一憂 火消しに躍起?今週の株式相場は外国為替市場での円相場の動きに大きく左右された。
それも安倍内閣の閣僚や党三役などからの発言がキッカケで……。

ことの発端は、連休明けの15日、甘利経済再生担当相の発言に始まる。
甘利経済財政相は「度な円安は輸入物価にはねかえり、国民生活にとってはマイナスの影響も出てくる」と述べ、一方的な円安に懸念を示したのである。

円安懸念発言では、自民党の石破茂幹事長も経団連幹部との会談で「産業によっては困る企業も出てくる」と述べた。
これを受けて、16日の東京株式市場は為替相場の円高推移を受けてほぼ全面安となり、日経平均株価の終値は前日比278.64円安の10600.44円と5営業日ぶりに反落した。

この甘利、石破発言からの想定の範囲を超える円高・株安進行に、安倍内閣は火消しに躍起になった。
まず、菅官房長官は16日の記者会見で、甘利経済財政相が15日に過度の円安への懸念を示したことについて「全く意図的ではない。
『過度な円高がいま是正されている段階』という政府の見解で共通認識は一緒だ。
私達の考え方は私の発言だ」と述べ、円安を否定したものではないことを訴えた。

菅氏は石破氏の発言については、「普通のことを言っているのを過度に反応しすぎだ。
業種によっていろんな反応は出るだろう」と擁護した。

甘利経済財政相の発言に対しては、高村副総裁が「民主党ほどではないが、自民党にも自分たちが選んだ首相の足を引っ張る悪い癖がある。
任期中は首相を一致団結して支えるという良い文化を作ることが、日本を取り戻すことに直結する」と苦言を呈したほどである。
甘利、石破発言のなかには、日本の一方的な円安バイアスが、米国など周辺国からの圧力を生んでいたということもあり、それをかわす目的もあったであろうが、政府・自民党が一枚岩ではないことも露呈してしまった。
政府と日銀の政策協定。
日銀との3者会談で共同文書に合意か?
安倍首相はかねてから円高是正、デフレ脱却を経済政策の根本としてきた。
インフレターゲット論を掲げ、日銀にさらなる金融緩和を迫ってきた経緯がある。
火消しに動いた安倍内閣の閣僚が、さらに市場に投げかけたメッセージが政府と日銀との政策協定である。

麻生財務相、甘利明経済財政相が進めていた政府と日銀との政策協定について、政府と日銀はデフレ脱却のため2%の物価上昇率を目指す共同文書の内容で合意した。
18日午前には麻生財務相と甘利経済財政相、白川日銀総裁が都内のホテルで詰めの協議を行った。
22日に日銀が金融政策決定会合を開催した後に正式決定する予定である。

麻生財務相は共同文書をめぐる会談後の記者会見で、「政府・日銀間の連帯強化の仕組みについて検討しており、トップ同士で意見交換した」「22日の決定会合後に文書化する」と述べた。

甘利経済再生相も会見で「腹を割ったいい議論ができた」と述べた。
両氏とも会談の具体的内容には触れなかったが、文書の内容について最後の詰めを行っており、方向性は大筋で合意済みの模様である。
19日に外遊中の安倍首相が帰国した後に最後の詰めを行い、21日、22日の日銀の金融政策決定会合での判断を踏まえ、22日に正式決定をする。
インフレターゲット2%を共有。
達成時期については明記せず
日銀は国債などの買い入れ期限を決めない無制限の金融緩和を検討するなど、「これまでと次元の違う金融緩和」(西村副大臣)を打ち出していく方針。
西村副大臣によれば、政府と日銀で2%の物価目標を共有するが、達成時期は明記せず、金融緩和手段は日銀に委ねることになるという。
共同文書には政府も、規制緩和などを推進し成長戦略を実行していく旨を記載するとともに、財政再建の重要性も盛り込む方向だ。

日銀は21日、22日に開く金融政策決定会合で、現在は1%の事実上の物価目標を2%に引き上げるとともに、達成が見通せるまで無制限に国債買い入れなどの金融緩和を続けることを検討する。
金融機関が日銀に預けている当座預金の超過準備に付く0.1%の金利(付利)の撤廃の是非も議論する。
政府から「資産買い入れ基金の毎月の増額などでは市場が予想できてしまう。
次元の違う大胆な政策を期待したい」という声に応える方針だ。
「次元の違う金融緩和」の中身とは?日銀はバランスシート拡大か?現行の金融緩和は日銀が基金で国債などの金融資産を買い入れる期限をあらかじめ決めて実施しているが、期限を決めずに物価目標2%に向けて毎月一定の買い入れを続ける形や、買い入れが終了する2013年末以降も満期を迎えた国債などの買い入れを継続するなど、無制限の買い入れを検討する。
無制限の緩和を強調することで、金融緩和強化の姿勢が鮮明にしたい考えだ。

当座預金の付利についても撤廃の是非を議論する。
日銀の内部には「短期金融市場の機能が失われる」として反対の意見もあるが、審議委員のなかには「短期金利が低下し、他国との金利差をもたらし、為替相場を円安方向に後押しする効果が期待される」と指摘する委員もいるなど、円安を通じた景気刺激策として前向きに検討する意見が出ている。

無制限緩和と付利撤廃はともに昨年11月の決定会合で一部審議委員から意見が出ていたことが、政策決定会合の議事要旨から明らかになっている。
付利撤廃は12月の会合で石田審議委員が提案したものの否決された。
しかし、安倍首相が金融緩和強化の手段のひとつとして言及しており、市場では付利撤廃を織り込みつつあることから、固定金利オペで応札が募集額に達しない札割れが相次いでいる。
付利撤廃について何もコメントしないというわけにはいかないだろう。

雇用の安定については文書で触れるかどうか、現時点では未定である。
甘利氏は18日の会見で、「総理はFRBがそういうことをしている例として引き合いに出しただけだと思っている。
それによって日本がそうする、しないの議論ではない」と述べるにとどめた。

物価目標達成に向けた進捗状況については、日銀総裁が経済財政諮問会議で説明する説明責任についても記載するが、目標の達成時期は明記しない方向だ。
日銀も2%の物価目標の達成時期を明記することは、金融政策の柔軟性が損なわれ、市場の思惑から長期金利が急上昇しかねないとして消極的である。

しかし、政府からは「5年、10年先では困る」との声があることも事実であり、結果的に中期的な物価目標達成を目指すことになるだろう。
どのような文言で達成時期に触れるのかは注目点である。
日経平均の騰落レシオは130% 政策決定会合の結果を見極めよ!一方、急激な円安進行に諸外国の批判が急増しており、政府は通貨外交による環境整備が求められる。
もともと、円高・株安を呼び込んだ甘利、石破発言も、通貨外交に配慮したものだ。
水面下でコンセンサスを得られるのかを踏まえつつ政府は金融緩和を促進していかなければならない。
さらに、これらの急激な金融緩和で長期金利が急上昇しないよう財政規律の担保も急務である。

日銀に対する過剰ともいえる市場の期待に対して、緩和策が期待外れとなるリスクを警戒する声もある。
もはや、国債買入拡大を軸にした基金の増額だけでは市場は納得しないだろう。
日経平均の騰落レシオ(25日)は18日の終値で143.7%に達している。
25日移動平均線のとの乖離率も6.4%。
一般的に騰落レシオは130%、移動平均乖離率は5%以上で過熱気味を示すとされる。
緩和策が期待外れとなれば、日柄調整から失望売りを誘う呼び水にもなりうる。

白川総裁も当座預金の付利撤廃に対して慎重姿勢を崩していない。
しかし、今回見送られたとしても、4月以降に固まる日銀新体制の下で改めて議論される可能性は十分にある。
日本株のこれまでの出遅れ感からして、円安傾向が強まればテクニカルを無視してさらに戻りを試す可能性も捨てきれない。

まず21日、22日の日銀金融政策決定会合に、甘利経済再生相は現時点で「出る方がよいかと考えている」と述べた。
まずは、日銀金融政策決定会合でどのような結論が出るか、政府と日銀の政策協定の結果などを見守りたい。

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