為替ニュース

直近の決算発表予定

2013年5月10日金曜日

<円安101円台>「世界の中心に戻った」輸出業高揚

「どこまで行くんだ。
円売りが止まらん」
10日午前10時過ぎ、東京・丸の内の三菱東京UFJ銀行のディーリングルーム。
端末の表示が4年1カ月ぶりに1ドル=101円を示すと興奮気味の声があちこちから上がった。

金融市場部為替グループの野村拓美(たくみ)上席調査役は午前4時過ぎにルームに駆けつけた。
「虫の知らせ」で目が覚め、スマートフォンで米国市場で午前3時ごろ(日本時間)に1ドル=100円に達したことを確認し、タクシーを拾って会社に急いだ。
6時過ぎから社内外からの電話が次々に鳴り始め、相場が足踏み状態だった前日までとは一変。
「売買も活発」と高揚感を隠さない。

外国為替市場で通貨を取引する個人投資家も動いた。
横浜市の男性(26)はパソコン相手に徹夜でドル円の取引に打ち込んだ。
一晩で約1000万円の利益が出たといい、「見立てが当たった」。

午後3時過ぎ、日産自動車が横浜市で開いた決算会見。
壇上に上がったカルロス・ゴーン社長は2014年3月期の利益が約2割増になる見通しを示し、加速する円安について「日本は世界の中心に戻ってきた」と経営環境の改善を喜んだ。
円高など「六重苦」にさいなまれてきた自動車業界には円安は福音。
自動車部品関連製品を手がけるヤマシタワークス(兵庫県尼崎市)の浜田賢治統括部長は「自動車メーカーからの受注は夏以降に増えるだろう」と期待する。

だが、輸出企業でも円安が進めば進むほど潤うわけではない。
東芝は円安が1円進むと営業利益を年間30億円押し上げるが、1ドル=90円を超えて円安が進むと輸入部品の調達価格上昇などから効果は15億円に半減。
久保誠専務は8日の決算会見で「円安で燃料輸入コストが上がると電気代などにも響く」と懸念も示した。

原材料や燃料などを輸入に頼る業界への影響は深刻。
4月下旬に燃料価格上昇への支援を訴え一斉休業した「全国いか釣り漁協」の幹部は「現在の為替水準なら漁に出ても赤字」と嘆く。
埼玉県内のある零細運送業者は「これ以上の円安には耐えられない」と肩を落とし、輸送ルートの効率化などに知恵を絞り始めた。

原材料価格の上昇で、缶詰やマヨネーズ、食用油や電気代の値上げが迫るなか、株高の恩恵を受けない家計は、賃上げなしでは生活が厳しくなる。
東京都江戸川区のスーパーで買い物をしていた、近くの高橋隆子さん(72)は「年金と少ないパート収入で1人暮らしなので、値上げは困る」と話した。

◆ ◆ ◆
約4年ぶりの円安に金融市場は沸き、輸出企業は収益改善に潤う。
だが、円安に伴う輸入価格の上昇が、ジワリと暮らしに響き始めている。
メリット、デメリット、果たしてどちらが大きいのか。
多くの人がまだはかりかねている。
【まとめ・岩崎誠】

0 件のコメント:

コメントを投稿

ブログ アーカイブ